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賃貸住宅オーナーの取り組みを探る オーナーとして心がけていることとは… 需要と供給のギャップ、少子高齢化の進展など、賃貸市場には逆風が吹き荒れている昨今。「建てれば入る」時代は遠い昔話となり、今や安定した賃貸経営には、さまざまなノウハウが必要だ。
蒲田太郎氏(仮名)は、品川区・目黒区に複数の賃貸物件を所有、いずれもほぼ満室を維持しているという。この地域は都内でも人気エリアということもあるが、それ以外にも秘訣があるはず。蒲田氏に、そのあたりの話を聞いた。
みんなが使うエントランスには資金を投下せよ! まず、いくつかの所有物件を見学させていただいた。
そのなかで目を惹いたのは、エントランス周りの豪華さだ。ある物件では、エントランスの壁一面に「大谷石」を貼り、またある物件では一面「大理石」であった。大谷石とは、栃木県宇都宮市大谷町を中心に採石される凝灰岩。旧・帝国ホテルの建築などにも用いられた高級資材である。
また、オートロック・宅配ボックス、物件内各所を確認できる防犯カメラ・モニターの設置など、総戸数20戸前後の賃貸物件ではあまり目にしない充実度である。
「玄関はみんなが使う場所だからこそ、そこに資金を投下することによって、入居者満足度を上げることができると考えている」(蒲田氏)とのこと。
なるほど!
思いを入居者に伝える「サポートNOTE」「引越しセット」 内見できた物件もあるので、紹介しよう。
東急目黒線「西小山」駅・「洗足」駅、いずれの駅からも徒歩約7分の「洗足ガーデン」(東京都目黒区)だ。築11年、総戸数20戸の鉄筋造の物件で、専有面積は36平方メートルの1DKが2戸、27~28平方メートルの1Kが18戸。家賃は10万~12万円台の設定。こちらの入居率も、年間通じて約95%とのこと。
内見できたのは1Kの部屋で、バス・トイレは独立。居室は洋室で、大きめのクローゼットが付く。非常にオーソドックスではあるが、使い勝手は良さそうだ。
ふと部屋を見回すと…「サポートNOTE」というファイルと、「引越しセット」と名付けられた紙袋が置いてある。いずれも、仲介会社ではなく、オーナーみずからが用意したものだという。
「サポートNOTE」は、オーナーからのあいさつのほか、物件のPRポイントや、地域の案内、設備説明書、ゴミの分別方法や緊急連絡先などを一つのファイルにまとめたもの。
ついバラけがちなそうした書類を、入居後、一つのファイルで保管できるのは、入居者にとってはもちろん、オーナーとしても、書類等をなくされるリスクが減る点からもメリットといえそうだ。オーナーの、物件に対する愛情も感じることができる。
「引越しセット」は、ビニールテープ、トイレクリーナー、軍手、自治体指定のゴミ袋をセットにしたもの。すぐに必要なものばかりなのが嬉しいし、何しろ入居前の段階でこのセットを見たら、「入居を歓迎されている!」と感じるに違いない。
縁を大切に…。オーナーとしてのメッセージ ところで、蒲田氏のこだわりとして、入居審査の際はできるだけ入居希望者と顔を合わせる、というのがモットーだとか。
「人間って一度顔を合わせるだけで、その後の関係が全然違ったものになりますから…」(同氏)。
以前、ある入居者が退去する際に「実は換気扇の調子がずっと悪かった」と告げられたことがあったという。もちろん、そういったことは連絡があればすぐに対応する。しかし、このときの入居者は連絡しづらかったのだろう。蒲田氏がその事実を知ったのは、その入居者が退去する時だったのである。
「一度顔を合わせていれば、言いづらいことも言いやすいはず」。同氏は反省も踏まえて、そう語る。
なお、退去の立会いにもよほどのことがない限り、立ち会うという。
「オーナーは、入居者と顔を合わせて言葉を交わす機会が、意外と少ない。入退去時は、話ができる絶好の機会。物件の良かった点、悪かった点も聞けるし、『また機会があったら、声をかけてね』と営業もできます。この機会を業者さんに任せてしまうのは、非常にもったいない」と力説する。
また、物件を管理していく上でおつきあいが必要となる電気店、ハウスクリーニング業者、リフォーム業者などの取引先は、価格最優先で決めることはせず、極力地元の業者に依頼するようにしているという。
「物件の価値は、地元の発展とリンクして、上がりも下がりもする。だからこそ地元の業者の方がやや高かったとしても、そこにお願いするようにしています。またそういう業者は、つながりが密になればなるほど、機敏に動いてくれるし、場合によっては無理も聞いてくれる。そういうつながりを大切にしたい」(同氏)。
そんなオーナーの温かな思いが、入居者に、そして取引業者に伝わって、それがまわりまわって満室経営につながっている、そう感じた取材であった。(RN)
<もと記事>新宿三丁目駅